医薬経済は医療・医薬を取り巻く環境の“いま”にフォーカス!

MENU

【今週の提言】 長野のカレー屋さんが地域包括ケアを学ぶ理由

 長野県飯田市にあるカレー屋さんから拙著『地域包括ケアとは、○○である』の注文が来た。MR向けに書いた本を、なぜカレー屋さんが買ってくれたのか。早速、購入者にメールしてその理由を尋ねた。

 10年後の2027年にリニア飯田駅が開業する。そうなると、品川から約30分で飯田に来ることができる。飯田市をケアが必要な高齢者にとって魅力的な街にすれば、“地域包括ケア”でブランディングできるかもしれない。最近、新聞でよく目にする地域包括ケアの記事を眺めながら、そのように考えるようになったという。

「896」――。2040年に消滅すると予想されている市町村の数である。子どもの95%超は20~39歳の女性から生まれる。その年齢層の女性が2010~2040年までの30年間で5割以上(前出のカレー屋さんがある飯田市は▲43.9%)減少する市町村を、日本創成会議は“消滅可能性都市”と位置付けた。

 医療・医薬品産業は、①人口、②生活レベル、③医療制度、④景気――関連型産業である。そのため、人口構造の変化は、医療・医薬品市場にも大きく影響する。経済産業省が2015年3月にまとめた「将来の地域医療における保険者と企業のあり方に関する研究会」報告書によると、2040年以降も急性期機能を含めた入院医療需要が伸び続ける二次医療圏は全344医療圏のうち52しかない。この52医療圏を担当するMRはラッキーかもしれない。

 しかし、すでに外来需要が落ち始めており、入院医療需要も早々にピークを迎える多くの医療圏を担当するMRの実績は、何もしなければ上昇カーブを描くことは難しい。患者が少なくなるからだ。

 消滅可能性都市からは、多くの企業も撤退することになり、さらなる人口流出を招くだろう。医療・介護サービスも縮小せざるを得なくなる。日本中に“離島”ができるような状況が2040年には現実のものとなる。言うまでもなく、そのような地域に多くのMRは必要なくなる。

 衰退していく地域を、ただ傍観するだけなのか。それとも、飯田市にあるカレー屋さんのように、魅力的な街づくりにコミットするのか。カレー屋さんにMRやMSが負けるわけにはいかないだろう。

…………………………………………………………………
川越満(かわごえみつる) 1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。

BEHOLDER