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『週刊誌のツボ』 ★ウソだらけの為政者たち

 保守系、と呼ぶのもためらわれる“右”の論者たちは「もり・かけ問題」による政権支持率の低落について「メディアが悪い」の大合唱を始めている。政権は潔白だし、元々たいした疑惑ではない→なのにメディアが煽る→だから支持率が下がった、という話にしたいようである。

 どこまで目の曇った人たちか。少なくとも5月頃までのメディアは、一連の報道にあからさまに及び腰だった。前川・前文科次官のインタビューをしながら報道しなかった社が複数存在した。テレビ番組は、それなりに裏付け文書のある内部告発と政権側の“根拠なき否定”の双方を“五分五分の水掛け論”と位置づけ、“平等”に扱った。それでも国民の心証は悪化していったのだ。

 人々が呆れた最大のポイントは、疑惑そのものではない。文書は処分した、記憶にない、キーマンに証言もさせたくない、でも告発は事実ではない、という子供じみた強弁やごまかしを、登場する政府関係者が誰しも繰り返す“総ヒラメ状態”に呆れたのだ。

“この程度の小さな疑惑”なのに、与党政治家や政府高官は、ここまで見苦しく虚言を繰り返す。“本当に重大な問題”ならより一層、彼らはウソを徹底するだろう。世間に広がるのは、そんな種類の絶望である。私たちはすでに、この政権に特定秘密保護法という武器を与えてしまっている。濫用への罰則規定はない。こんな政権が“自分たちに都合の悪い事実隠し”のためにこの法を悪用しないなどと、誰が信じられるのか。

 それにしても、私がもし政権側の黒幕なら泣いて馬謖を斬り、“人柱”をつくるのに、と思う。この高官が個人的に不適切で過剰な忖度をしてしまった、と罪を一身に被せ、辞任してもらうのだ。首相の直接関与を示すもの以外、文書類はすべて“再発見”したことにして公開する。もちろん目立たない形でこの高官の生活の面倒は見てゆくが、こうした方法以外、幕引きの方策は見当たらない。しかし、なぜか政権は頑張り続け、支持を失っている。

“より重大な問題”という点では、サンデー毎日は前号から「スノーデン証言が暴く共謀罪と監視社会」という驚くべき連載を始めている。執筆者はこの問題に詳しいジャーナリストの小笠原みどり氏だ。

 それによれば、この4月、アメリカの調査報道メディア・インターセプトは、スノーデンに提供された日本に関連する15点以上のNSA(国家安全保障局)内部文書を公開、そこには世界中のネット通信や携帯電話を傍受するNSAの違法なシステムが日本にもすでに導入されたことが記されているという。

 このことはNHKクローズアップ現代が2度に分けて取り上げたが、その報じ方はいかにも中途半端だった。「エックスキースコア」という世界中のインターネットから調べたい文言を含む通信を見つけ出すシステムに関しては、米側が2013年、システムを秘密裏に日本政府に提供したことが記されている。にもかかわらず、番組は共謀罪審議への影響を“忖度”したためか、防衛省の回答拒否を理由に「事実関係は確認できなかった」と曖昧に言及しただけだった。

 冗談ではない。このアメリカの機密公文書は、日本政府がすでに広範な違法盗聴・通信傍受システムを備えたことを暴露しているのだ。今週の続報では、NSAの監視基地が在日米軍基地3ヵ所に構築され、その建設費600億円がこれまた極秘裏に日本政府によって支払われていたことが取り上げられている。

 連載は次号もまだ続く。政府はもちろん真偽を明かさないし、下手にこの件を調べようとする人は、機密保護法で処罰されてしまうかもしれない。だが現在の法体系では、一般への通信傍受はあくまでも違法なのだ。政権のウソ・ごまかしに寛容な国民は、果てしなく欺かれることになる。

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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。

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