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『週刊誌のツボ』 ★森友・新スクープの激震

 とうとう犠牲者が出てしまった。森友学園への国有地売却に関与した近畿財務局職員が非業の死を遂げた一件のことだ。朝日新聞が、決済文書の書き換え疑惑をスクープして数日後のこと、翌日には佐川宣寿・国税庁長官もいよいよ辞任を表明した。にもかかわらず、政府は未だ朝日報道の真偽は不明、という立場のまま非を認めず、ずるずると時間稼ぎを続けている。

 あきれ返るのは、右派陣営には、書き換え疑惑を報じるなら、異なる内容の公文書原本が存在することを朝日自らが立証しろ、などと主張する言論人がいることだ。多少でも常識があるならば、絶対に呑めるはずのない要求とわかるはずだ。

 現段階でもし、手の内にある物証をすべてさらしたら、政府はそれを見て口裏合わせや証拠の改竄をやりかねない。防衛省の日報隠し問題や加計学園問題での対応、厚労省による裁量労働制調査データの捻じ曲げなど、この1年で発覚した不始末の数々を眺めれば、政府がアンフェアなことをしない、などと信じ込むほうがどうかしている。

 思い起こせば、沖縄返還密約をめぐる外務省機密漏洩事件では、毎日新聞記者が極秘入手した公文書を旧社会党代議士に手渡し(これ自体が不適切なことだった)、政府にその現物を確認する機会を与えるミスを犯したため、“犯人捜し”と“スキャンダル攻撃”という政権の逆襲を呼び寄せてしまったのだ。その程度のことは、政権は平気でやる。

 そもそも朝日新聞は4年前の「吉田証言・吉田文書」問題で、戦後最大の大打撃を受けている。その傷も癒えぬうちに、不十分な裏取りでイチかバチかの博打になど出るはずはない。これほどの事案で誤報を出したなら、それこそ社の存亡が危うくなるからだ。

 そういった常識的な判断をせず、「手の内をさらせ」などと主張する論者はそれこそもう、政府の疑惑隠蔽に加担する意図があるとしか思えない。客観性や公益性を装うふりすらしなくなった一部言論人は、もはやそのレベルにまで堕してしまっている。

 かと思えば、歴史的にアンチ朝日の週刊文春がこの件では、『「森友公文書」改ざん疑惑 安倍首相は財務省に責任転嫁』というタイトルで、《政権を揺るがす特大スクープ》とその意義を正当に位置づけ、《一つ間違えば、安倍首相がよく口にしていた「築城三年、落城一日」が現実のものとなる》と記している。新潮は単信を載せただけだったが、その文章に皮肉や揶揄はない。

 今週はまた、文春が『沖縄・北方新大臣「ハレンチ」秘録』、新潮が『元愛人の「赤坂芸者」がぶちまけた「沖縄・北方担当相」カネと女』と銘打って、病気入院した前大臣に代わって就任した福井照・新大臣の悪評をともに暴いている。この手の人物ばかり窓口にあてがわれる沖縄の不運には心底同情するが、当人にしてみれば、政権の屋台骨そのものが揺らぐ大混乱にかき消される格好になり、“不幸中の幸いのスキャンダル発覚”と胸をなで下ろしているのかもしれない。

 女子レスリング・パワハラ問題では、先週、伊調馨選手の側に立ち第1報を放った文春に対抗して、新潮は告発された栄和人氏による反論を大きく取り上げた。昨年来、何かとぶつかり合う両誌が、今後しばらくはこのテーマで火花を散らしそうだ。

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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。

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