医薬経済は医療・医薬を取り巻く環境の“いま”にフォーカス!

MENU

【今週の提言】 小手先ではなく本質的なOPDの実践を

「(薬局の存在価値を示す)材料を出してもらえないと世間の厳しい指摘に反論できない。戦えない」――。厚生労働省薬剤管理官の中山智紀氏は、3月5日の診療報酬改定説明会後の講演で、調剤薬局をこれ以上“守りきれない”状況に置かれていることを示唆している。

 今回、大手調剤チェーンが「調剤基本料1」を算定できなくなったのは、大手調剤薬局チェーンによる不正請求事件が立て続けに明るみになったことが背景にある。処方せんの集中率を意図的に低い割合にするために、同一グループ内のB薬局で受け付けた処方せんをA薬局で受け付けたものとして、“高い”「調剤基本料」を保険請求するという「付け替え請求」を複数の大手企業が行っていたのだ。“事件”の詳細はRISFAXの過去記事で確認してほしい。

「付け替え請求」の影響は、他の項目にも影響を及ぼした。“小手先”で算定できるような新設項目は、今回の改定には存在しない。

 一部の製薬企業にとってショックだったのは、薬局薬剤師が処方医に減薬の提案を行い、6種類以上の内服薬が2種類以上減少した場合に算定できる「服用薬剤調整支援料」(新設・125点)の留意事項で「調剤している内服薬と同一薬効分類の有効成分を含む配合剤及び内服薬以外の薬剤への変更を保険薬剤師が提案したことで減少した場合は、減少した種類数に含めない」と明記されたことだ。つまり、Ca拮抗薬+ARB、Ca拮抗薬+スタチン、DPP-4阻害薬+メトホルミンといった配合剤に変更したり、経口薬から貼付剤に変更して内服薬を減薬しても、薬剤師の“実績”として認めないということだ。

 そもそも、前回(2016年度)の診療報酬改定で新設された「認知症地域包括診療料」に“5種類ルール”が入った背景には、以下のようなエビデンスがあった。

●「地域包括診療料」、「地域包括診療加算」を算定していない認知症患者において、6種類以上の内服を行う患者は半数以上に上り、10種類以上の薬剤を内服している患者も1割程度みられた。
●高齢者では、6剤以上の投薬が特に有害事象の発生増加に関連している。
●高齢者の薬物有害事象は、意識障害、低血糖、肝機能障害、電解質異常、ふらつき・転倒の順に多かった。
●服薬回数が多いほど、薬剤が正しく服用されにくくなる(服薬アドヒアランスが低下する)。
●服薬する薬剤数が多いほど、薬剤が正しく服用されにくくなる。(服薬アドヒアランスが低下する)。

 このうち、服薬アドヒアランスの低下を改善するための減薬という観点ならば、薬剤師が配合剤や他の剤形を提案してもいいはずだ。しかし、厚生労働省はそれを“小手先”と判断し、125点を与えないこととした。

 そのため、薬局薬剤師には「配合剤=減薬の手段」というトークは刺さらないだろう。企業側も小手先のディテーリングではなく、One Patient Detailingを実践しなければ、“減薬改定”後に製品を採用・増量してもらうことは難しくなる。 

…………………………………………………………………
川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。

BEHOLDER