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【今週の提言】 医師に薬を手放させる

 講演では、2025年前後に起きる出来事のひとつに「医師が薬を“手放す”(薬剤師外来・処方設計・フォーミュラリー拡大)」を紹介している。予想というよりは「希望」と言ってもいいかもしれない。

 ポリファーマシーや多剤併用がここ数年でクローズアップされているが、諸悪の根源は「他の医師の処方を“触らない”」という医師の習慣が影響しており、その習慣が薬の副作用に対して処方する「処方カスケード」をもたらしている。

 この「足し算思考」に対して“減薬加算”が診療報酬で評価されることになったが、「引き算思考」の薬剤師が医師から処方権を譲ってもらわない限り、問題の根本的な解決は難しい。

 先週の札幌講演では、「『医師が薬を手放す』を仰っていましたが、どういった意味になるのでしょうか? 外来で医師は処方をせず、薬剤師が代わって処方するという意味なのでしょうか?」と講演後にメールで開業医から質問を受けた。

 医師に薬を手放してもらうには、2つのステップがある。1つは、「薬剤師外来」の導入だ。薬剤師外来には、①診察前に薬剤師が患者と面談、②薬剤師が診察に同席、③診察後に薬剤師が面談――という3つの手法がある。大垣市民病院は①により、経口抗癌剤S-1による胃がん術後補助化学療法の治療完遂率が39.4%から82.5%に倍増したことが報じられた(薬事日報2017年7月24日)。

 臨床的アウトカムはもちろんのこと、患者の主観的なアウトカム(QOLや満足度)と経済的アウトカム(患者が治療を中断しないため)も上昇させる可能性を薬剤師外来は持っている。

 この薬剤師外来が普及したら、次は地域によるフォーミュラリー(採用医薬品集)の作成・普及だ。連携パスが普及すれば、フォーミュラリーも普及すると考えられるが、問題はノーリスク・ノーリターン(アンダーユース)や不適切処方を繰り返す医師が野放しになっていることだ。今後は地域包括ケアの波に乗って自治体と住民を巻き込んでフォーミュラリーを普及させていってほしい。

 望ましい方向性は、薬剤師の処方提案を経て医師が決める。医師が方向性を決めた後に、患者のライフスタイルと他薬剤との相性を踏まえて薬剤師が薬剤を決める。この方向性を基幹病院、医師会、薬剤師会などでコンセンサスを得ることだ。

 医薬品の適正使用というMRの本分を果たすためにも、薬剤師外来とフォーミュラリーへの取り組みをサポートしよう。

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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。

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