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【今週の提言】 やる気のない医師にはどうすれば良いか?

Q:地域包括ケアは、進んでいる地域(施設)と進んでいない地域がある。あまりやる気がない地域の先生には、どのようなアプローチをすればいいか?
 
 先日、某CSO企業の研修会を取材した。業界誌編集長の講演後に、会場のMRから出た質問である。講師の代わりに回答したい気持ちが湧き上がったが我慢した。

 ここに私からの“回答”を書いて当該企業の研修事務局にお知らせしたいと思う。きっと、質問者に届くだろう。

 禁煙指導や服薬指導、特定保健指導などで用いられるカウンセリング手法に「行動変容ステージ」というものがある。

 ステージは5段階になっており、「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」のプロセスを通して人は行動を変えるという考え方だ。

①無関心期:6ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がない時期
②関心期:6ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期
③準備期:1ヵ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期
④実行期:明確な行動変容が観察されるが、その持続がまだ6ヵ月未満である時期
⑤維持期:明確な行動変容が観察され、その期間が6ヵ月以上続いている時期

 今回の質問内容を行動変容ステージでとらえれば、地域包括ケアに「やる気がない」医師は“無関心期”に位置づけられる。

 無関心期に行動を促すようなコミュニケーションは不毛であり、相手の心をより一層閉ざすことになってしまう。「他人は変えられない」という原則を知り、「自分から変わろうかな」と感じさせて「関心期」以降のステージに移行できるように、少しずつ情報提供を重ねていくしかない。

 情報提供をするうえで重要なことは、“NGワード”を自分からは用いないことだ。地域包括ケアにネガティブな医師は、「地域包括ケア≒在宅医療」と捉えているふしがあり、「自分はもう年だから在宅医療はやりたくない」という声をよく聞く。本連載の読者は、その考えが間違いであることを十分に理解しているはずだ。

 なので、「地域包括ケア」と「在宅医療」というキーワードを使わずに、「10年後のアウトカム」を意識してもらうようなコミュニケーションを取っていかなければならない。

 例えば、先週紹介した患者の“掘り起し”プランについて一緒に考えてみることもよいし、地域の三師会及び自治体の取り組みに関する情報提供でもいいだろう。また、自分が担当する領域と「フレイル」「ポリファーマシー」を絡めて、健康寿命を延伸するためにできることを考えることもオススメしたい。

 重要なことは地域包括ケアに限らず、「先生が本当にやりたいこと」をサポートして行動させることである。

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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。

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