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〔鵜の目鷹の目〕それでも辺野古移設が必要か

 沖縄県知事選は普天間基地の辺野古移設に反対する玉城デニー氏が勝利した。選挙結果は「もう沖縄に基地はいらない」という県民の声である。「地方創生」を声高に叫ぶ政府・自民党は無視できないはずだ。米ニューヨークタイムズ紙が「何度も何度も県民は新しい基地を欲していないことを示した。日米(両政府)は公平な解決策を探すべきだ」という記事を載せたが、もともと辺野古移設には無理がある。米軍は「東シナ海や南シナ海での有事に備えて沖縄に基地があることが必要だ」と言い、政府も「尖閣諸島防衛に即応できる」と辺野古移設を決定、辺野古の埋め立てを強行してきた。

 だが、この論拠には誤魔化し、すり替えがある。辺野古に移るのは世界最強と言われる米海兵隊だが、海兵隊が前線近くに基地を持つ必要があるのだろうか。海兵隊が真っ先に戦闘地域に駆けつけるというのは20世紀初頭までの話である。第2次世界大戦でもそうだったが、海兵隊が出動するのは戦争の半ばからで、真っ先に出動するのは海軍である。

 いい例が湾岸戦争であり、イラク戦争だ。湾岸戦争では戦争になる前の外交交渉がうまくいかないとき、空母を擁する海軍の機動部隊が相手国の近くに行き、空には空中警戒機が舞い、圧力をかける。それでも外交交渉に失敗した時、戦争になるが、最初の攻撃もやはり海軍だ。湾岸戦争ではサウジアラビアに50ヵ国を超える国の軍隊が集結したが、最初は米海軍艦艇がイラクが占領したクエート沿岸の島にミサイル攻撃を行い、島を占領したことだった。続いて駆逐艦から発射された巡航ミサイルであり、空軍と海軍の戦闘機によるミサイル攻撃と爆撃で全面戦闘に発展した。

 空海軍によるイラク軍部隊や基地に対する1週間近い徹底的なミサイル攻撃でイラク軍の戦闘能力を破壊した後が海兵隊と陸軍の出番である。イラク占領下のクエートに向かって米海兵隊とアラブ合同軍が海側を進み、隣を英陸軍が進み、その外側の中央部を進軍したのがフランスの外人部隊とイタリア軍。さらに最も距離が長い外側の砂漠地帯を米陸軍が長躯、突撃した。

 この陸上攻撃が始まるまで海兵隊は何をしていたかと言えば、アメリカの砂漠でクエートとイラクの町並みを模した家を作り、市街戦の演習をしていたのだった。決して「真っ先に海兵隊が即応する」というわけではなかった。海兵隊が真っ先に上陸して市街戦を始めたら、多くの死傷者が出てしまい、指揮官だけでなく大統領まで責任を問われる。海兵隊が真っ先に駆けつけて戦闘を行うというのは意図的な作り話である。

 つまり、東シナ海有事を考えたとしても、沖縄に海兵隊が駐留しなければならないという理由にはならない。もともと米海兵隊は本土にあった基地を沖縄に持っていったのだから、移転先は本土でもいいし、グアムやハワイ、オーストラリアでも差支えない。しばしば沖縄に駐留することが「北朝鮮や中国に対する抑止力になる」という意見もある。しかし、すでに沖縄には米空軍の嘉手納基地があり、米海軍の那覇軍港がある。抑止力は十分である。世界最強のアメリカと戦争したいなどと考える国はないだろう。

 現に沖縄に駐留する1万9000人の海兵隊をグアム、ハワイ、オーストラリアに分散するという話が出たことを考えれば、移設先は辺野古でなければならないという理屈が屁理屈に過ぎないことがわかる。そもそも沖縄県民から歓迎されない状態で沖縄に駐留するのは米海兵隊にとっても不幸なことである。もっと知恵を絞るべきだろう。(常)

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