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<シリーズ・民の知恵>地域包括ケアに参加する図書館(後編)

◆「認知症にやさしい図書館ガイドライン」

 こうした動きのなか、17年10月には「認知症にやさしい図書館ガイドライン」が発表された。筑波大学図書館情報学の呑海沙織教授らが中心になってつくったもので、図書館職員向けに、認知症の人や家族との具体的な接し方、情報提供の仕方などの指針を掲載している。

 図書館スタッフに認知症サポーターの配置を勧めたり、症状の抑制やQOL向上、情報の普及啓発のための、回想法や音読、ヒューマンライブラリーなど資料・情報の提供などが具体的に示されている。認知症の人や家族と保健・医療・福祉サービスとをつなぐこと、地域の地域包括ケアに連携し協力すること、認知症の人や家族のニーズ把握のための取り組みを「できるところ」から行う――などとある。

◆図書館を襲う改革の波

 そうとはいえ、図書館にもこうした取り組みを真正面から行うことの難しさもある。国内の図書館は大学や私設図書館などを除くほとんどが公立図書館で、国内に3331館(図書館年鑑2018)あり、約8割が市(区)立。公立図書館は文部科学省の管轄下にあり、直接の上部組織はほとんどが教育委員会だ。

「結果」の見えにくい図書館に対して行政改革、つまり予算・人員削減の大波は容赦ない。今や正規職員数は25%(17年日本図書館協会調査)と、08年に非常勤職員数が正規職員数を上回って以降、減り続けている。図書や雑誌を購入する「資料費」も「05年から17年まで減少の一途(321億1200万円→292億8200万円)」(図書館年鑑2018)という状況にある。

 そうであっても、図書館の役割には▼子育て支援▼起業支援▼子どもの読書活動支援や学校連携▼来館者の資料探しの手伝い▼地域向け郷土史教育▼イベント企画――など、業務は山積みだ。「図書館の来館者は高齢者だけではないし、福祉は正面業務ではない。通常業務だけで手いっぱい」という司書の声もある。

 行政改革の波が図書館民営化という流れを生み、12年に佐賀県武雄市が、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を市立図書館の指定管理者にしたために「質が下がった」と報道されたことを覚えている人もいるだろう。その後もCCCの図書館の指定管理者受諾は続いており、来年10月には和歌山県にCCCの運営として最大規模図書館が開館する予定だ。行政改革の大波に揉まれ、変化を求められている図書館がどう舵を切るかの、転換期でもあるとも言えるだろう。

◆認知症に優しい=誰にでも優しい

 井上氏は、「認知症にやさしいということは、子どもや障害のある人、皆にやさしい図書館になります。図書館資料と司書の専門性を活かし、それらを地域の他機関とコラボレーションしながら、これからもコツコツとやっていきたいと思っています。複数の機関が垣根を越えて地域の課題に取り組めば、住民にやさしい街づくりにつながると思うし、図書館の価値を高めることになるのでは」と、今後の図書館の新しい在り方への期待を語った。

 勉強会を主催する大阪大学地域包括ケア学教室の山川みやえ准教授(写真)は、「図書館は誰もが知っていて、どの地域にも必ずあるというポテンシャルがあります。ただ、図書館はあくまで社会教育の場なので、地域包括ケアの中でのプレーヤーのひとつという位置付け。認知症の人への対応は、可能な範囲で小さなことから取り組んでいただければと思います。重要なのは、地域包括ケアシステムとは、地域にあるひとつひとつの社会資源の価値を最大限に高めていくことであり、うまく組み合わせて使うということです。人が継続的に通う場としては、図書館以外にも美容院、接骨院、駅、スポーツジム、郵便局、役所などが『認知症にやさしいまち』の拠点になり得ますので、図書館を足掛かりにして広げていければと思っています」と今後の地域包括ケアの展望を語った。(梨)

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