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【今週の提言】 ガイドラインでアナログ化に戻る日報

 人生は、「自分を信じられるかどうかのゲーム」だが、組織の働き方改革は、「他人を信じられるかどうかのゲーム」である。

 MRの働き方改革の一例として、▼朝の卸訪問▼医局前の待機▼アポイントのない訪問▼上司同行(表敬訪問)▼何も決定しない会議▼活用されない日報――をまずは廃止することから始めてほしいが、最後に挙げた“日報”の廃止は難しくなってしまった。

 その理由は2019年4月から適用される「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」(以下、活動GL)の存在だ。

 活動GLでは、販売情報提供活動の担当部門から独立した「販売情報提供活動監督部門」が、MRらが適切な販売情報提供活動を行っているか、定期的にモニタリングを行うとともに、担当部門・担当者に対して必要な監督指導を行うこととされている。

 働き方改革や効率化の一環として進められてきた日報の簡素化(ほぼクリックのみで完了)にブレーキをかけ、監督部門が行うモニタリングにふさわしい活動報告に、日報をマッチさせなければならなくなる。

 活動GLに厳しく対応するならば、MRの活動内容を、活動GLの適用範囲でもあるコールセンターの記録に近づける必要性が出てくる。一部の在宅医が行っているように、患者宅を訪問後にiPhoneのボイスメモアプリを立ち上げ、診療内容を吹き込むとったプロセスがMRにも求められることになりそうだ。

 以前は、記録されたボイスメモを在宅勤務の看護師等に送って文字化していたが、今の技術なら5W1Hで吹き込んだ内容を振り分けることは可能だ。

 これなら、MRにこれまで以上の負荷はそれほどかからない。めでたし、めでたし……とならないのが企業に求められているモニタリング業務だ。

 例えば、1000人のMRが平均10人の医師に訪問(会えなかったり、ほとんど話せなかった医師も含む)したと仮定すると、毎日、1万件の報告があがってくることになる。これをモニタリングしなければならない。目視でチェックするのは現実的ではない。ここにはAIなどのICTを導入して、“あやしい”報告を抽出すればいい。

 おそらく、活動GL適用後の一番の課題は、適切に保管することが義務づけられる「業務記録」(販売情報提供活動において口頭で説明等を行った内容の記録を含む)に“報告されてしまった” 副作用・有害事象や適応外に関連する情報に、企業側の対応が追いつくのか?ということだろう。

 活動GLにより、すべての副作用が報告されない「報告バイアス」を拡大するようなことがあってはならない。市販後調査にリアルワールドデータ(RWD)を活用することが認められた最大のメリット「副作用報告のみに依存せず、能動的に副作用情報・投与状況等を把握できる」ことと同様に、活動GLの適用をきっかけに、PMS活動の強化に活動をシフトすることが求められている。

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川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。

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