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『週刊誌のツボ』 ★新潮が文春にブチ切れ!

 週刊新潮がライバル誌・週刊文春に対する怒りの大特集を展開した。『スクープ至上主義の陰で「産業スパイ」! 新潮ポスターを絶え間なくカンニング! 「文春砲」汚れた銃弾』。グラビアに2ページ、本文には10ページものスペースを割くド迫力の記事である。

「汚れた銃弾」は1984年、文春の伝説的スクープ、三浦和義氏にまつわるロス疑惑を報じた際のタイトル「疑惑の銃弾」をもじったフレーズだ。文春が発売日の同じライバル誌の内容をいち早く知るため、毎週こっそりと出版取次会社から電車の中吊り用広告を入手して、あろうことか校了日のギリギリのタイミングで自社誌面からこぼれ落ちた記事、新潮に抜かれた内容を補足・手直しして誌面をつくっていた、というのである。

 新潮編集部は、新聞広告の文案が盗まれているのか、はたまた中吊り広告か、漏洩先を特定するために、それぞれの内容を微妙に変えるなど、入念な調査のうえ、取次会社から文春本社に戻る社員を発見して尾行、この社員が新潮の広告をコンビニで複写する決定的瞬間まで押さえている。

 文春の新谷編集長はすぐさま反論の声明を発表、「情報収集の過程で他メディアの動向をつかむことはしばしばある」としながらも、不正な方法での入手や盗用の事実はない、と主張している。

 新潮の周到な取材記事を見る限り、文春は相当に分が悪い。ただ、私の心根が汚れ切っていたためか、校了日間際にドタバタでライバル誌の広告を入手するこの“情報戦”、てっきり、文春・新潮双方ともやっていることなのだと勝手に思い込んでいた。今回の新潮の怒りようを見て、あぁさすがにこれはかなりの綱渡りをする週刊誌の世界であっても、掟破りとされることだったのか、と改めて認識した次第である。

 それにしても従来、他社の批判ではネチネチと嫌味たっぷりの文章で書く新潮も、ことがわが身に降りかかる問題となると、ストレートに怒りを示すのだと新鮮な感慨も覚えた。新潮は山口敬之氏のレイプ疑惑の続報『「準強姦逮捕状」の「安倍総理」ベッタリ記者に アッキーが「いいね!」した“女の敵”』でも独走を続けている。思わず笑ったのは、山口氏が新潮の取材を受け、北村滋・内閣情報官と思しき「北村さん」にメールを転送しようとして、あろうことか新潮編集部に「北村さん」宛てのメールを誤送信してしまったマヌケぶりである。

 しかし、自らのレイプ疑惑をめぐって安倍首相側近の公安エリートにすぐさま相談するこの山口氏、もはや首相の身内以外の何ものでもなく、“ベッタリ”も度が過ぎているように思う。山口氏が自身の記事を発表する主要媒体が文春、というところも、新谷編集長にとってはやりにくいところだろう。

 そんなわけで文春は今週、小池都知事の告白記事のほか、新婚・菊川怜の夫に4人目の婚外子がいた問題や、東京国立博物館の「茶の湯」展に贋作と思しき茶杓が出されていたことなど、そこそこのスクープを何本かそろえたが、いまひとつ印象は小粒で、唯一、長期にわたって対談ページを持つ阿川佐和子氏が63歳にして結婚報告をした微笑ましい長文手記が、かろうじて救いになっている。

 サンデー毎日の保阪正康氏の連載『一語一会 私が出会った「昭和の怪物」』は今回も読み応えがある。前回の続編『敗戦体験を改ざんした瀬島龍三の「自己保身」』である。天才の名をほしいままにした元大本営参謀は、戦後も政界の大物指南役として君臨し続けたが、今回の記事によれば、シベリア抑留者たちが編纂した記念誌の原稿で自らに関わる記述を改竄、自身を美化・正当化しようとするなど、そのイメージとかけ離れた実像の小物ぶりが何とも堪らない。

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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを 広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。

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