医薬経済は医療・医薬を取り巻く環境の“いま”にフォーカス!

MENU

【今週の提言】 客観的<主観的な評価が重要な時代に

 約20年に渡って講演活動をしているが、これまで一度も講演で訪れたことがなかった福井県に2週連続で訪れて講演した。

 講演する際には、当該地域のデータを確認して資料に盛り込んでいるが、福井県は47都道府県「幸福度」ランキングで3年連続トップに輝いている。ちなみに、個人的に私が最も胃袋をつかまれた高知県が最下位である。

 福井県はなぜ幸福度が高いのか。同ランキングは▼人口増加率▼1人当たり市民所得▼選挙投票率▼財政健全度▼合計特殊出生率▼自殺死亡者数▼勤労者世帯可処分所得――の「基本指標」をベースに、「健康」(ホームヘルパー数・健康診査受診率など)、「文化」(書籍購入額・外国人住民数など)、「仕事」(若年完全失業率・事業所新設率など)、「生活」(持ち家比率・1人暮らし高齢者率)、「教育」(不登校児童生徒率・悩みやストレスのある者の率など)という5つの指標によって構成されている。

 同ランキングをまとめた日本総合研究所によると、福井県は仕事、生活、教育分野のランキングで上位を占めている。特に、「雇用」は「正規雇用者比率」(3位)、「大卒者進路未定者率」(1位※少ないほうがよい)を含む5項目で5位以内と優れている。

 逆に低いのが「文化」で「外国人宿泊者数」(43位)、「文化活動等NPO認証数」(45位)などは下位だ。この「文化」が強いのが総合2位の東京都だ。総合順位3位の長野は、基本指標と5分野すべてが15位以内と抜群のバランスのよさが目立つ。

 一方、国連が毎年発表している世界幸福度ランキング2018(主要156ヵ国を対象)によると、日本は54位と惨敗している。1位は教育費や医療費が無料のフィンランドだ。この世界ランキングが前出の都道府県幸福度ランキングと違うのは、幸福度を10段階で聞いた“主観的な”アンケートだということだ。もし、都道府県のランキングも主観的に調査すればランキングはまったく異なる結果になるだろう。

 これから客観的と主観的のどちらが医療界において重要なのだろうか。私は後者だと思う。地域包括ケアは、患者さん、住民一人ひとりの幸福度を100%に近づけるシステムだとも言える。ハードやソフトが充実していて客観的には全国1位になっても、住民の幸福度が1位になるとは限らない。

 これは、医師や薬剤師からみたMRの評価にも言える。アンテリオ社がまとめた「地域医療に貢献していると思う製薬企業トップ10」では、1位が武田薬品で、第一三共、大塚製薬、アステラス製薬、ファイザーがこれに続いている。自治体との連携協定などで長年地域包括ケアにコミットしてきたエーザイがベスト3に入らなかったのは意外だったが、この調査も、全国の医師1万6000人を対象に主観的に質問した結果だからだ。

 訪問回数、講演会の回数など数値ができることは管理しやすいので重要視されがちだが、現実には、数値化できない要素が勝敗を分けることになるケースのほうが多いのではないだろうか。

 企業側の論理ではなく、目の前の医師や薬剤師の主観的な評価を上げるのはどうすればいいのか。これは担当しているMRにしかわからない。じっくりと向き合うしかない。

…………………………………………………………………
川越満(かわごえみつる)  1970 年、神奈川県横浜市生まれ。94年米国大学日本校を卒業後、医薬品業界向けのコンサルティングを主業務 とするユート・ブレーンに入社。16年4月からは、WEB講演会運営や人工知能ビジネスを手掛ける木村情報技術のコンサナリスト®事業部長として、出版及 び研修コンサルティング事業に従事している。コンサナリスト®とは、コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備えるオンリーワンの職種として04年に 川越自身が商標登録した造語である。医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010 『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。講演の対象はMR志望の学生から製薬企業の幹部、病院経営者まで幅広い。受講者のニーズ に合わせ、“今日からできること”を必ず盛り込む講演スタイルが好評。とくにMR向けの研修では圧倒的な支持を受けており、受講者から「勇気づけられた」 「聴いた内容を早く実践したい」という感想が数多く届く。15年夏からは才能心理学協会の認定講師も務めている。一般向け書籍の3部作、『病院のしくみ』 『よくわかる医療業界』『医療費のしくみ』はいずれもベストセラーになっている。

BEHOLDER